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事業報告

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書評詳細

「新規航空会社事業成立の研究」

著者塩谷 さやか
出版社中央経済社
発刊日2008年3月刊
書評執筆者香川 眞
書評執筆者所属日本国際観光学会会長
書評公開日2008.09.01

書評
世界的にLCC(低コスト新規航空会社)の活躍は著しく、欧米ではすでにLCCのシェアは30%程度にもなっている。日本以外のアジア地域でも、エアアジアに代表されるLCCのシェ
アは、2010年には30%程度にまで増加すると言われている。
しかしながら、日本においては、スカイマークをはじめとする新規航空会社が20世紀末に登場したものの、その数も少なく、シェアも世界的な傾向に比べて著しく低い。
本書は、このような状況に問題意識を持ち、LCCが日本で成立する要件を検討し、経営政策上の要件と航空政策上の改革案を提示している。
著者は、長年にわたって航空会社に勤務し、国際線客室乗務さらには経営企画の仕事に従事。その間、ニューヨークの大学、大学院に学び、早稲田大学の大学院では経営学、経済学を学んだ。退社後は、LCCについての研究を博士論文にまとめ、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科(現商学研究科)より、2007年2月に博士号を取得した。本書は、その博士論
文を、データを新しくするなどして加筆修正したものである。
本書では、序章で目的と意義を明らかにしたうえで、第1章でサウスウエストやライアン、エアアジアなど、諸外国の成功しているLCCを分析し、それらに共通する要因を整理している。
第2章においては、第1章の緒論と対比させながら、日本の新規航空会社が振るわない経営上の要因と、経営政策の自由な実施を阻害している制度上の制約について分析している。
これらの結果をもとに、第3章では、日本における新規航空会社の事業成立可能性を、仮想の航空会社を設定して、シミュレーション分析をモンテカルロ法によるリスク分析を加えて行い、また、第4章では、この航空会社がリスクの高い新規国際路線に進出する場合を想定して、その投資事業価値を、リアル・オプション法によって分析している。
第1?4章の検討結果を受けて、終章では、新規航空会社の事業成立には、(1)最低4?5機程度の一定の規模による創業開始、自社整備と運航乗務員の自社訓練、機材の統一、ノンフリル化の徹底、高頻度効率運航等よって低コスト体質を構築すること、(2)大手航空会社と競争可能な、大手の普通運賃の5割?6割程度の運賃、(3)国際線を含めた、高頻度の運航の可能な路線構成、(4)貨物航空ビジネスへの参入、(5)創業時の一定規模を維持できる資金の確保、等が求められること、また、事業評価においては、リアル・オプション法の活用が有用であること、が結論されている。
本書は、コーポレート・モデルによる財務シミュレーションを、航空輸送分野に初めて適用し、また、限定された分野以外ではあまり例を見ないリアルtオプション分析を航空に実際に適用して、経営学の分析手段を用いて新規航空会社の分析を行った点で、評価される。
本書は、さらに、経営政策にとって制約となる航空政策上の問題点についても検討し、(1)大手の独占的行動防止手段の事前規制から事後規制への転換、(2)混雑空港における需給調
整の撤廃と保護主義的な国際航空協定の自由化、(3)外資規制の撤廃、(4)二次空港の活用促進策の政策的検討、等の提言を行っており、経営的な側面だけでなく、航空政策上の提言にまで議論をすすめている点で、評価される。
計測による分析のみならず、さまざまな資料を渉猟して現実のLCCの世界を分析していることとあわせて、研究視点の視野の広さ、分析手法の多様さという点からも、包括性の高い
一書である。経験と研濱をさらに積むことによって、研究の一層の深化が期待される。

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